裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Miyashita Mio

春休みが終わって数日。



始業式から
少しだけ時間が経っただけなのに、

2年F組にはすでに
目に見えない " 序列 " ができてきている。



誰が中心で、誰が傍観していて、
そして誰が " 売られる側 " になるのか。

笑顔の下で、
みんなが探り合っている。



決定的な何かが
起きたわけではない。



けれど、
互いの立ち位置を測るような視線が、

教室のあちこちに
浮かんでいる。



宮下 澪 は、
そんな空気を
冷静に観察していた。



特に目立つつもりもなければ、
誰かと深く関わろうとも思わない。



けれど、
何かが変わったことは、
澪自身がよくわかっていた。



ーー南雲 しずく。



冷たくもなく、明るくもない。

どこか色素を持たない彼女は、
別のクラスだった去年、
廊下や行事で見かけても、

まるで風景のようだった。



けれど
新年度が始まってから、

澪の目に映る彼女は、
何かを背負っているように見える。



何かを必死に隠しているようにも、
逆にすべてを
諦めているようにも見える。



どちらなのか、決めきれないまま
澪はしずくを見つめていた。



その無表情の
奥にあるものを知っているのは、

おそらくこのクラスで
自分だけだ。



——あの日、あの出来事。



教室に差し込む夕暮れの光のように、
澪の記憶の片隅には、

しずくが必死に泣いていた
あのときの姿が焼きついている。



しずくは
「 正当防衛 」と認定された。

でも、それだけで片付けていいほど、
簡単な話ではない。



目の前にいたのは、
命の重さと、

大人たちの冷たい視線を
一身に浴びた8歳の少女だった。



幼いころ。近所の公園で、
よく一緒に遊んでいた記憶がある。

いつも無口で、
でも滑り台のてっぺんでは
しずくはよく笑っていた。



今のしずくの無表情が、
まるで別人のように感じられるのは、
きっとそのころの記憶が強すぎるからだ。
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