裏SNS " F " - 友か、秘密か -
- side - Nagumo Shizuku
4月の朝は、
空気が少しだけ尖っている。
新しい季節への期待と、
何かを失ってしまうような不安が
混ざり合って、
春の匂いに紛れていた。
八雲大学附属高校の正門をくぐると、
南雲 しずくは
無意識に背筋を伸ばす。
制服の襟を指で整えて、
深呼吸をひとつ。
入学して、ちょうど1年。
通い慣れた校舎も、
今日はまるで
知らない場所のように見える。
今日から、2年生。
元1年E組の中で
成績の良かったしずくは、
特別選抜クラス「 2年F組 」に
振り分けられていた。
成績優秀者だけで編成された
20名ほどの少人数クラス。
そんなクラスがあることは
前から聞いていたけど、
実際に自分が入ることになるなんて、
少しも思っていなかった。
教室のドアを開けると、
中はまだ
半分も生徒が集まっていない。
席について
参考書を広げている男子、
集まって
何やら話している女子たちーー
ちょっと、
独特な雰囲気……。
後ろのボードに
張り出されている座席表には、
定期テストの
成績上位者一覧で
何度も目にした名前ばかりが
並んでいる。
しずくの席は
2列目のいちばん後ろ。
ほっとした気持ちで席に座って、
窓の方を眺める。
桜の花びらが
ひらひらと舞い落ちては、
遠くに見える
グラウンドの土に紛れていく。
新しい季節の匂いが、どこか
非現実的な空気を
連れてきている気がした。
「 そういえば聞いた?
うちのクラスだけ、なんか変な試験やるって 」
後ろのドアから入ってきたのは、
榊原 萌子 と 藤井 舞。
ブランド物のリュックを
気怠そうに背負うふたりの噂話が、
しずくの後ろを通り過ぎる。
「 変な試験って?」
「 なんか、クラス限定の裏アプリなんだって。
投稿したらポイントがもらえて、
そのまま換金できるらしいよ?」
「 やば。闇バイト?」
「 えー違うでしょ。
なんか実験とかモデルとか……
そういうやつじゃないの?」
爪の先まで整えられたスタイル、
艶のある巻き髪。
" 髪型・化粧自由 " という
珍しい校則を活かした
ばっちりと決まっているメイクに、
誰かを見下ろすような視線ーー
「 え!うちら前後じゃん、ラッキー 」
「 舞の後ろ、梨々花じゃん。
元C組固まってんね〜 」
「 ほんとだ〜
でも、詩帆と琉生はちょっと離れてる 」
軽口を叩き合いながら、
あっという間に
自分たちの世界を築いていく2人。
背の高い方、藤井 舞は、
モデルの経験もあるらしいと
同じ中学から来た子たちが囁いていた。
空気が少しだけ尖っている。
新しい季節への期待と、
何かを失ってしまうような不安が
混ざり合って、
春の匂いに紛れていた。
八雲大学附属高校の正門をくぐると、
南雲 しずくは
無意識に背筋を伸ばす。
制服の襟を指で整えて、
深呼吸をひとつ。
入学して、ちょうど1年。
通い慣れた校舎も、
今日はまるで
知らない場所のように見える。
今日から、2年生。
元1年E組の中で
成績の良かったしずくは、
特別選抜クラス「 2年F組 」に
振り分けられていた。
成績優秀者だけで編成された
20名ほどの少人数クラス。
そんなクラスがあることは
前から聞いていたけど、
実際に自分が入ることになるなんて、
少しも思っていなかった。
教室のドアを開けると、
中はまだ
半分も生徒が集まっていない。
席について
参考書を広げている男子、
集まって
何やら話している女子たちーー
ちょっと、
独特な雰囲気……。
後ろのボードに
張り出されている座席表には、
定期テストの
成績上位者一覧で
何度も目にした名前ばかりが
並んでいる。
しずくの席は
2列目のいちばん後ろ。
ほっとした気持ちで席に座って、
窓の方を眺める。
桜の花びらが
ひらひらと舞い落ちては、
遠くに見える
グラウンドの土に紛れていく。
新しい季節の匂いが、どこか
非現実的な空気を
連れてきている気がした。
「 そういえば聞いた?
うちのクラスだけ、なんか変な試験やるって 」
後ろのドアから入ってきたのは、
榊原 萌子 と 藤井 舞。
ブランド物のリュックを
気怠そうに背負うふたりの噂話が、
しずくの後ろを通り過ぎる。
「 変な試験って?」
「 なんか、クラス限定の裏アプリなんだって。
投稿したらポイントがもらえて、
そのまま換金できるらしいよ?」
「 やば。闇バイト?」
「 えー違うでしょ。
なんか実験とかモデルとか……
そういうやつじゃないの?」
爪の先まで整えられたスタイル、
艶のある巻き髪。
" 髪型・化粧自由 " という
珍しい校則を活かした
ばっちりと決まっているメイクに、
誰かを見下ろすような視線ーー
「 え!うちら前後じゃん、ラッキー 」
「 舞の後ろ、梨々花じゃん。
元C組固まってんね〜 」
「 ほんとだ〜
でも、詩帆と琉生はちょっと離れてる 」
軽口を叩き合いながら、
あっという間に
自分たちの世界を築いていく2人。
背の高い方、藤井 舞は、
モデルの経験もあるらしいと
同じ中学から来た子たちが囁いていた。