裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Segawa Rui

昼休み、教室の片隅。



瀬川 琉生は、

購買で買ってきたからあげの包装を
片手で器用に剥がしながら、

スマホを机にぽんと置く。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 大橋 詩帆

大橋 詩帆はプライドが高い

Point ◇ 600pt 】



開きっぱなしの " F " に、
投稿が更新される。

おそらく
榊原 萌子あたりが書き込んだのだろう。



あからさまに何かを企んだ表情で
宮下 澪に
声をかけていた萌子。

あれから3人は
一緒にいることが多いが、

宮下 澪は
萌子の真意に気が付かないのだろうか。



( ……にしても、ポイント高くね?)



ポイントの数値は
そのまま換金額に適応されるが、

それが何をもって決まっているのかは
未だ不明。



注目度や
ネタのでかさで決まるのだとしたら、

こんなのに
600ptもつくはずがない。



「 みんなよく
あんな堂々と投稿できるよな。
俺だったらビビって手ぇ止まるわ 」



隣で話す根岸 幸太は、

炭酸のジュースが入ったボトルを
回しながら、

ちらりと琉生のスマホ画面に目をやった。



「 ……マジで?
ねぎ、まだ一回も投稿してないの?」



「 いやー、
特にわっと脅かせられるネタもねえし?

それに下手に人傷つけるのも
気が引けるんだよ 」



「 はは、根岸くん、優しいなあ。

でもさ、
そこまで深刻に考える必要なくね?

みんなもう、ネタとして楽しんでるし 」



そう言いながら、
琉生はスマホを操作して
" F " の画面を開いた。

投稿の一覧から、
いくつかピックアップして、
ねぎに見えるように画面を傾ける。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 大橋 詩帆

大橋 詩帆は、課題を必要以上に取り組んでいる
レポート500字以上なら、800字、というように

Point ◇ 560pt 】



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 玉置 賢斗

玉置 賢斗は外部受験を検討しているようだ。

Point ◇ 620pt 】

 

【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 三枝 理子

三枝 理子は週に1回、
生物の教師に質問に行っている

Point ◇ 220pt 】

 

「 な?このノリ。
俺が上げたやつもあるけど。
これぐらいなら遊びで済むでしょ 」



それでもねぎは
納得しきれないように眉を寄せる。



「 迷ってんならとりあえず試してみれば?
いきなりデカいネタじゃなくていいし。

例えば……
立石 葵は今日も購買で
焼きそばパンを狙ってたとか。

そんな感じでさ。
俺のこと書いてくれたっていいのよ?」



そこへ百瀬 梨々花が、
パンをかじりながらやってくる。



「 何の話?」

「 Fの投稿について教えてたとこー。
根岸くん、初投稿に悩んでてさ 」

「 ふーん、ねぎって意外と真面目だよね。
……で、琉生、また変なこと教えてない?」

「 いやいや。俺、良心的指導者ですから 」



そう返しながら、
琉生は立って壁に寄りかかる。

梨々花は「 あやし 」と呟きつつも、
スマホを覗き込むと、
琉生の椅子に腰掛けた。



琉生は画面をスクロールしながら、
投稿のコツを解説する。



「 ターゲット選びが大事なんだよね。
注目されてるやつを選ぶと反響がデカいし、

逆にFに興味ない奴に関する投稿は
スルーされがち。

あと、下手に重い内容よりも、
日常のどうでもいいネタが
意外と刺さるんだよ 」



梨々花は呆れた顔をしつつも、
「 ふーん 」と小さく唸った。
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