裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Hanayama Hibiki

教室の騒がしさは、
日に日に熱を帯びていく。



" F " に支配される日常。

誰かが笑う時、
裏では誰かが怯え、

画面の奥で
誰もが興奮している。



花山 響は
静かに自分の席に座り、

前方で盛り上がる
瀬川 琉生とその周辺を
遠目に見ていた。



耳には
ノイズキャンセリングのヘッドホン。

目の前には、
生物の教科書。



父親が開業医である響にとって、
生物は馴染み深い科目だ。

けれど、響の関心は
すでに授業の先へ飛んでいた。



ーー放課後、自室。



白を基調とした家具が並び
整頓された部屋の一角。

壁際には、
3台のパソコンが並んでいる。



それぞれに
異なるOSとユーザー設定。

目的やアカウントによって
使い分けるためだ。



そのすべてが、
医師である父親に
買ってもらったものである。



" 自分の進む道は、自分で決めればいい "



父はそう言って、
病院を継ぐことを勧めなかった。

母もまた、
看護師として現場に立ち続ける
芯のある女性だ。



両親は、

息子がパソコンの前で
黙々と作業を続けている姿に
文句一つつけず、

ただ、温かく見守ってくれている。



──だからこそ、響はこの時間に真剣だった。



モニターの明かりが
壁を青白く照らし、
キーボードの打鍵音だけが静かに響く。



今、響はそのうちの1台で、
" F " のスマホアプリをエミュレートしていた。

仮想端末上に環境を構築し、
アプリのコードを分解。
構造をひとつずつ洗い出す。



" F " へのハッキングを始めてから、
すでに数十時間は費やした。

それでも、響は飽きるどころか、
ますます熱を帯びている。
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