裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Ichinose Haru

休み時間のチャイムと同時に、
教室が一斉にざわつき出した。



雑多な声が交わり、

椅子を引く音、
スマホの通知音、

誰かの笑い声が混ざる。



「 マジで勝手に入ってる 」

「 これ本当にお金もらえんのかな?」



生徒たちは
こぞってスマホを取り出し、
口々に " F " の話題を口にする。



誰かが言った冗談でも、
軽口でもない。

たったいま、
全員のスマホに、一斉に、

自動インストールされたアプリ " F " 。



一ノ瀬 悠 も、
自分のスマホを手に取り、
無言で画面を開いた。



( 明らかに異常だろ、これ )



メニューを辿り
設定画面を開いてみても、

" アンインストール " の項目は
グレーアウトしていて、

タップしても無反応。



そして、
GPS、通知、カメラ……

すべてのアクセス権限が
すでに承認されている。



( 監視アプリみたいだな…… )



思わず舌打ちしそうになるのを堪えて、
もう一度
机の上にスマホを伏せた。



指先に、
ほんの少しだけ汗が滲む。




「 ペナルティって何?ヤバくない?」

「 ポイント報酬とか、ちょっと怖いよね 」

「 でもこれ、
本当にお金貰えるなら面白いかも 」



榊原 萌子 と 藤井 舞、

それから
生徒会の副会長で顔の知られている
大橋 詩帆 が

教室の隅で騒いでいる。
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