裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Miyashita Mio

テスト二週間前の朝。
F組の教室にはいつもより少しだけ、
硬い空気が流れていた。



HRのチャイムが鳴り終わると、
鴨田先生が前に立つ。

普段よりもほんの少しだけ声を張って、
教室を見回した。



「 期末テストまで、あと二週間。
F組として、しっかり準備してください 」



いつもなら聞き流されるようなその一言に、
教室の一部でくすりと笑い声が漏れた。

この教室にいるだけで、
" 優等生 " であることが保証されている。

八雲附属のF組は、
学年上位からしか選ばれない。
いまさら勉強しろと言われるまでもない。



けれど、宮下 澪はなぜか、
鴨田先生のひと言が胸に引っかかった。



――私たちは、
本当に " 優等生 " なんだろうか。



前回の中間テスト。
榊原 萌子と藤井 舞に
勉強を教えた日々を思い出す。

あのとき、自分の勉強時間は確かに削られた。
その結果、点数は落ち、順位も落ちた。

でも、テストが終わったあと、
嬉しそうに笑っていた舞と萌子の顔が、
澪の頭から離れない。



「 ありがとう、澪のおかげすぎる 」
「 マジ感謝。今度ハンバーガーおごるから 」



そんな言葉のひとつひとつが、
澪の胸の奥に柔らかくも重く残っている。

そして同時に、誰にも見せられない焦燥が、
静かにその隙間を締めつけていた。



その日の昼休み。



「学食、行こうよ！」



萌子が手を振るように言った。
舞と立石 葵、澪も頷いて、
八雲大学の敷地内にある学食へと向かう。

大学生に混じって食券を買い、
窓際の席に座った瞬間。
4人のスマホが同時に震えた。



Fからの通知だった。



【 本日より2週間、ボーナスタイムを開始
投稿ポイントがすべて2倍になります 】



「 え、やば。なにこれ 」

「 絶対、テスト前狙ってるよね。えげつな 」



舞が目を丸くする。
萌子は呆れたようにそう言いながらも、
その指はスマホをタップしていた。