裏SNS " F " - 友か、秘密か -
- side - Nagumo Shizuku
新しい席が決まった朝、
教室の空気は少し浮ついていた。
テストの結果で席が変わるこのシステムに、
文句を言う声はない。
成績がすべてで、点数が席を変える
──無機質なルールが、
日常の一部として受け入れられている。
自分の席がどこになったか、
誰が隣か、前後はどうか。
そんな話題で教室はにぎわっていたけれど、
南雲 しずくはその輪の外にいた。
いや、ずっと前から、
そこにはいなかったのかもしれない。
しずくの席は、前回と同じ。三列目の一番前。
黒板が近く、先生の声もよく通る。
後ろのざわめきから少しだけ距離があり、
まるで教室の喧騒から切り離されたような場所。
嫌いではない。
けれど、" 変わらない " 毎日に、
心のどこかがわずかに乾いていく。
席が変わったのは、
自分ではないクラスメイトたち。
その中でも、特に目を引いたのが、
大橋 詩帆だ。
詩帆の席は、右列の二番目。
斜め後ろから見るその背中は、
今日はいつもより真っ直ぐに見えた。
詩帆は今回のテストで、
瀬川 琉生を抜き、二位になった。
目標だと言っていた八雲大への推薦も、
ほぼ確定。
静かに、でも確実に、
夢に手を伸ばしていた。
その姿に、
しずくは心のどこかでほんの少しだけ、
うらやましさを覚えた。
目指す場所がある人は、まぶしい。
前だけを見て、真っ直ぐに進んでいける。
自分には、もう分からなくなっていた。
どこへ向かえばいいのか。
そもそも、向かう場所があるのかすら。
けれど、しずくは気づいていた。
詩帆の瞳の奥には、別の光があることに。
──ようやく手に入れたからこそ、
今度は " 壊したい " のかもしれない。
そんなふうに感じた瞬間、
詩帆がふとこちらを振り返った。
教室の空気は少し浮ついていた。
テストの結果で席が変わるこのシステムに、
文句を言う声はない。
成績がすべてで、点数が席を変える
──無機質なルールが、
日常の一部として受け入れられている。
自分の席がどこになったか、
誰が隣か、前後はどうか。
そんな話題で教室はにぎわっていたけれど、
南雲 しずくはその輪の外にいた。
いや、ずっと前から、
そこにはいなかったのかもしれない。
しずくの席は、前回と同じ。三列目の一番前。
黒板が近く、先生の声もよく通る。
後ろのざわめきから少しだけ距離があり、
まるで教室の喧騒から切り離されたような場所。
嫌いではない。
けれど、" 変わらない " 毎日に、
心のどこかがわずかに乾いていく。
席が変わったのは、
自分ではないクラスメイトたち。
その中でも、特に目を引いたのが、
大橋 詩帆だ。
詩帆の席は、右列の二番目。
斜め後ろから見るその背中は、
今日はいつもより真っ直ぐに見えた。
詩帆は今回のテストで、
瀬川 琉生を抜き、二位になった。
目標だと言っていた八雲大への推薦も、
ほぼ確定。
静かに、でも確実に、
夢に手を伸ばしていた。
その姿に、
しずくは心のどこかでほんの少しだけ、
うらやましさを覚えた。
目指す場所がある人は、まぶしい。
前だけを見て、真っ直ぐに進んでいける。
自分には、もう分からなくなっていた。
どこへ向かえばいいのか。
そもそも、向かう場所があるのかすら。
けれど、しずくは気づいていた。
詩帆の瞳の奥には、別の光があることに。
──ようやく手に入れたからこそ、
今度は " 壊したい " のかもしれない。
そんなふうに感じた瞬間、
詩帆がふとこちらを振り返った。