DEEP BLUE
泡のような思い出
泡のような思い出
─────それからというもの……。
太郎は度々、あたしがアフターがない日の送迎ドライバーとしてよく一緒になった。
後から知った事だけど、人懐っこくて明るい彼は嬢からも人気があったらしい。
でもあたしはそんな事知らなかったし、まぁ顔も可愛い顔してるからモテるんだろうな、くらいにしか思っていなかった。
………そして何より不思議だったのは、彼に嫌悪感がなかったこと。
人が苦手で拒否しまくっていたあたしが、だ。
彼のペースに乗せられるというのか、とにかく彼が持つ人柄、オーラが穏やかで優しい雰囲気で。
人に警戒心を持たせる事がない、善良タイプというんだろうか。
だからあたしと太郎は、すぐによく話す仲になった。
「ねー太郎」
「はい?」
「今日さぁ飲み過ぎたんだよね……」
「愛美さん、それいつも言ってますよ」
「……そぉだっけ?」
「はい、必ず毎日一回は言ってますよ」
「……あちゃ〜、じゃ太郎はさりげなくあたしに毎日飲み過ぎてるって言ってるワケだ。」
「ですね、遠回しに。」
「あははっ、そっか」
何を言っても笑わせてくれる太郎は、少しずつ少しずつ。
決して笑うことがなかったあたしの日常に、笑顔を与えてくれた。
……別にそれがうわべだとしてもいい。
たとえ付き合いだとしても、笑うことによって人間らしさを与えて貰った気がしたから。