シュガーラテ─火消しの恋は、カフェの香り
指輪
静かな春の午前、
舞香は白いシャツに袖を通しながら、窓から差し込む光に目を細めた。

背後から近づいてきた海斗が、そっと肩に手を添える。

「もうすぐだな、式まで」

「……うん。信じられないくらい、あっという間だった」

思い返せば――
火災の日、カフェで出会って、すれ違って、
それでも手を離さず、ここまで来た。

「やっと、名前で呼べるんだな。“舞香”じゃなくて、“舞香・朝比奈”」

「……うん。そうなるね」

舞香の左手に、きらりと光る小さな指輪。

「ずっと、大切にする。絶対に離さないよ」

その言葉に、舞香は笑って――
「もう離すなって、何度も言ったの、海斗さんじゃん」と、ちょっと拗ねたように返した。
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