シュガーラテ─火消しの恋は、カフェの香り

少しずつ特別になる

「今日も来ると思う?」

香奈衣の問いかけに、舞香は軽く首をかしげた。

「さあ……でも、来ないかもしれないです。
忙しい人ですし、たまたま暇だっただけかも」

「ふーん。“たまたま”が続いたら、それもう偶然じゃないけどね」

コーヒー豆をミルに入れながら、香奈衣はさりげなく目を細める。

――また、そういうことを言う。

けれど、舞香の心のどこかでは、
今日、扉が開く音に反応する自分がいるのをちゃんとわかっていた。

あの人が来るか来ないか、
それだけで、こんなにも胸の音が変わってしまうなんて。

“特別”だと気づくには、もう少し時間がほしかった。
でも、“普通じゃない”とは、もうとっくに知っていた。
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