シュガーラテ─火消しの恋は、カフェの香り
触れて離れない距離へ
イベントの翌日、カフェの窓辺には、ゆっくりと陽射しが差し込んでいた。
舞香はいつも通り開店準備を整えながらも、昨日の光景が何度も頭をよぎっていた。
ブースのにぎわい。
親子連れの笑顔。
そして、朝比奈さんの――あの、穏やかな視線。
「ほら、またボーッとしてる」
香奈衣がトレイを置きながら、舞香の頬を軽く指ではじいた。
「いっつもより丁寧にペーパーナプキン折ってるの、バレてるからね?」
「え……そんな、つもりじゃ……」
「うんうん。そういうとこ、ほんと可愛い」
香奈衣はひとりごとのように言って、レジ前に立った。
「……昨日さ。
あの人、ずっとあんたのこと、見てたよ」
「え……」
「視線ってね、受ける側が“気づいてないふり”してても、ちゃんと届いてんの。
あんたがちゃんと、頑張ってたって知ってる証拠だよ」
舞香は言葉に詰まりながらも、胸の奥がじんわりと温かくなっていくのを感じた。
その視線の意味を、まだ全部は知らない。
でも、知りたいと思ってしまっている――それだけは、もう確かだった。
舞香はいつも通り開店準備を整えながらも、昨日の光景が何度も頭をよぎっていた。
ブースのにぎわい。
親子連れの笑顔。
そして、朝比奈さんの――あの、穏やかな視線。
「ほら、またボーッとしてる」
香奈衣がトレイを置きながら、舞香の頬を軽く指ではじいた。
「いっつもより丁寧にペーパーナプキン折ってるの、バレてるからね?」
「え……そんな、つもりじゃ……」
「うんうん。そういうとこ、ほんと可愛い」
香奈衣はひとりごとのように言って、レジ前に立った。
「……昨日さ。
あの人、ずっとあんたのこと、見てたよ」
「え……」
「視線ってね、受ける側が“気づいてないふり”してても、ちゃんと届いてんの。
あんたがちゃんと、頑張ってたって知ってる証拠だよ」
舞香は言葉に詰まりながらも、胸の奥がじんわりと温かくなっていくのを感じた。
その視線の意味を、まだ全部は知らない。
でも、知りたいと思ってしまっている――それだけは、もう確かだった。