冷徹CEOは不幸なバツイチ女子を偽装婚約者に選びたい
1、元サレ妻、バツイチ、人生再生中
『ああ、離婚だ離婚だ。それがいい』
不貞を暴かれたとき、パートナーがこんなに清々しく離婚に同意するとは思わなかった。
私の観ていたドラマでは、もっと動揺して、不倫なんてしていないと隠し、最後は謝罪してやり直したいと懇願していたから。
想像していた展開と違いすぎて、私のほうが呆然としてしまっている。
『……謝るとか、ないの?』
相手の開き直ったような態度に、喉の奥が詰まるように苦しい。
怒りと、悲しみ。悔しさ、虚しさ……。
私はこんな思いをするために結婚したんじゃない。
『謝る? 俺にお前に? あのさ、なんでこうなったのか、自分に非がないとでも思ってるのか?』
『非って、私はなにも──』
『母親みたいにうるさいお前みたいな女、もううんざりなんだよ。奥さんとして、女として見れない。だから外で女つくるんだろ』
自分のしてきたことが正当だと言わんばかりの言い分に、もうそれ以上謝罪を求める気は起きなかった。
見えなかった、気づけなかっただけで、彼は初めからこういう人だったんだ。そう思うしかなかった。
この人に、私の気が鎮まる方法を求めても無駄。
一刻も早く離れて、別々の人生を歩むことを選ぶのが先決。
離婚をすることに、一寸の迷いもなかった。
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