冷徹CEOは不幸なバツイチ女子を偽装婚約者に選びたい

3、夜景と星空に見守られて



「お疲れ様でした。お先に失礼します」


 数人残っているチームメンバーに声をかけ、オフィスをあとにする。

 時刻は十九時前。

 六月の頭から、私は希望していたマッチングチームへと無事異動の希望を叶えた。

 七瀬CEOとの約束の後、本当に驚くスピードで人事から異動の通知が届いたのだ。

 それから、限られた時間で引継ぎをし、スピード異動。

 一般的には四月と十月に異動があるものだけど、六月という滅多にないタイミングでの異動となった。

 エレベーターに乗り込み、スマートフォンを取り出す。

 新着メッセージに起業アカウントからと混じって彩子先輩の名前があり、一番に開いた。


【お疲れさま。新部署はどう? 仕事含め、馴染めてきてる? タイミング合うときランチでも飲みでも行こう】


 可愛い絵文字とともに気にかけてくれているメッセージを読んで思わず笑顔になる。

 彩子先輩には、今回の異動が決まった件について詳細は話せていない。

 七瀬CEOの沽券に関わる内容であるかと思ったし、私も今回のあの一件を説明できる自信がなかったからだ。

 ただ、これまで彩子先輩には異動したい旨伝えていたし、希望を出していたのが通ったんだねと私が特に説明する必要もなく理解し喜んでくれた。

 元夫とその交際相手である後輩が同じチーム内にいることも精神衛生上良くないし、そこも会社のほうで配慮してくれたんだよと納得してくれた。

 そこに七瀬CEOが直接関わっているのは伏せているものの、異動に関しての内容には間違いはない。

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