亡国の聖女は氷帝に溺愛される
プロローグ
「──ごめんなさい」
囁きのような声で、少女は繰り返していた。
真っ白な吐息とともに、何度も同じ言葉を吐き続ける少女の瞳からは、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちている。
少女は祈るように両手の指を絡ませ、膝をついて泣き続けていたが、そこに返事ができる人は誰ひとりとしていなかった。
あるのは、まっさらになった大地だけ。
──どれくらい、そうしていたのか。
声も涙も枯れ果てた少女は、大地を蹴る蹄の音と馬の嘶きが聞こえたので、ゆっくりと顔を上げた。
目の先には、外套をはためかせている騎手の集団が迫ってきていた。
「──居たぞ!あれが例の聖女に違いない!」
「一言も喋らせるな!魔法を発動される前に押さえつけろ!!」
「────っ…」
セイジョ。マホウ。身に覚えもなければ聞いたこともない言葉を繰り出されたかと思えば、その集団──武装した大勢の男たちは馬から降りるなり、少女が身動きひとつできないように拘束していく。
一体何事かと問う間もなく、首の後ろに軽い衝撃を覚え、少女の意識は暗転した。
囁きのような声で、少女は繰り返していた。
真っ白な吐息とともに、何度も同じ言葉を吐き続ける少女の瞳からは、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちている。
少女は祈るように両手の指を絡ませ、膝をついて泣き続けていたが、そこに返事ができる人は誰ひとりとしていなかった。
あるのは、まっさらになった大地だけ。
──どれくらい、そうしていたのか。
声も涙も枯れ果てた少女は、大地を蹴る蹄の音と馬の嘶きが聞こえたので、ゆっくりと顔を上げた。
目の先には、外套をはためかせている騎手の集団が迫ってきていた。
「──居たぞ!あれが例の聖女に違いない!」
「一言も喋らせるな!魔法を発動される前に押さえつけろ!!」
「────っ…」
セイジョ。マホウ。身に覚えもなければ聞いたこともない言葉を繰り出されたかと思えば、その集団──武装した大勢の男たちは馬から降りるなり、少女が身動きひとつできないように拘束していく。
一体何事かと問う間もなく、首の後ろに軽い衝撃を覚え、少女の意識は暗転した。
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