蜜味センチメンタル
選びとる愛
・*†*・゚゚
那色は店のカウンター席に腰を下ろしながら、スマホの画面を見つめていた。
既読になった後の「会えない」という事実が、思った以上に堪えた。
理由は聞かない。
けれどあの男と何かがあったのだと、すぐに察した。
それが「どんなこと」だったのかは——怖くて、想像しきれなかった。
「……羅華さん」
ひとりごとのように呟いて、スマホを伏せた。
彼女が距離を取るときは、本当に誰も近づけたくないとき。無理に踏み込めば今の幸せを壊してしまうのではと、動けなかった。
けれど胸の奥では、
“彼女の涙に、自分は関われないんだ”という現実が、静かに痛みとなって広がっていった。
——コトリ。
視界の端に、温かな湯気が立ち上るカップが置かれる。
ミントとカモミールの香りがふわりと鼻をくすぐった。
「随分と浮かない顔だな」
顔を上げると、隣の席に大和が腰掛けた。
多くは語らない男だけれど、何もかも見透かしているような眼差しだった。
「羅華ちゃんとなんかあったのか?」
「……本当、無駄に勘だけはいいですね」
「そりゃな。お前の顔、何年見てきてると思ってんだ」
乾いた笑いが漏れる。
だけど、優しい気遣いはそのままに、ただ隣で黙っていてくれる大和の存在が今だけはありがたかった。
那色は、ハーブティーをひと口飲んだ。
温かさが喉を通り、胸に沁みる。
「……大和のせいですよ」
「俺?」
「あんたが元カレが出てくる、なんてフラグ立てるから、しっかり回収しちゃったじゃないですか」
ぽつりと漏れた責める言葉に、大和は何も言わず、グラスを静かに指で回していた。
やがて、低く、ゆっくりと言葉を返す。
「そりゃ悪かったよ」
「……」
那色は店のカウンター席に腰を下ろしながら、スマホの画面を見つめていた。
既読になった後の「会えない」という事実が、思った以上に堪えた。
理由は聞かない。
けれどあの男と何かがあったのだと、すぐに察した。
それが「どんなこと」だったのかは——怖くて、想像しきれなかった。
「……羅華さん」
ひとりごとのように呟いて、スマホを伏せた。
彼女が距離を取るときは、本当に誰も近づけたくないとき。無理に踏み込めば今の幸せを壊してしまうのではと、動けなかった。
けれど胸の奥では、
“彼女の涙に、自分は関われないんだ”という現実が、静かに痛みとなって広がっていった。
——コトリ。
視界の端に、温かな湯気が立ち上るカップが置かれる。
ミントとカモミールの香りがふわりと鼻をくすぐった。
「随分と浮かない顔だな」
顔を上げると、隣の席に大和が腰掛けた。
多くは語らない男だけれど、何もかも見透かしているような眼差しだった。
「羅華ちゃんとなんかあったのか?」
「……本当、無駄に勘だけはいいですね」
「そりゃな。お前の顔、何年見てきてると思ってんだ」
乾いた笑いが漏れる。
だけど、優しい気遣いはそのままに、ただ隣で黙っていてくれる大和の存在が今だけはありがたかった。
那色は、ハーブティーをひと口飲んだ。
温かさが喉を通り、胸に沁みる。
「……大和のせいですよ」
「俺?」
「あんたが元カレが出てくる、なんてフラグ立てるから、しっかり回収しちゃったじゃないですか」
ぽつりと漏れた責める言葉に、大和は何も言わず、グラスを静かに指で回していた。
やがて、低く、ゆっくりと言葉を返す。
「そりゃ悪かったよ」
「……」