蜜味センチメンタル
嫉妬の輪郭
・*†*・゚゚

年末が近づくにつれ、羅華の生活は慌ただしさを極めていた。

母には予定通り会いにいき、少しだけ安心させられた。年末に会う約束だけ残し、その日のうちに自宅へ戻った。


目の前のタスクは雪だるま式に膨れ上がっていく。式典準備の進行管理、年末販促の納期調整、外回りの打ち合わせに、立て続けの会食。余裕なんて、どこを探しても存在しなかった。

連日限界まで仕事をこなし、倒れ込むように眠る。バーにも行けず、那色とは会えていない。

スマホには那色からのメッセージが時々届いていた。内容はどこか軽やかで、負担には感じないようなものばかり。

[お仕事お疲れ様です]
[体調崩さないように気をつけてくださいね]

寂しくて干からびそうなんて言ったくせに、それについては触れてこない。


——やっぱり、あれは冗談だったのかな…?

そんな不安が過ぎる。

お店に顔を出さないくらい忙しいと知ってからか、那色の土曜日の訪問が無くなった。

そのおかげで体は回復できている。けれど、心はどこか穴が空いてしまったように風が吹き抜けていて。

「寂しい」なんて言葉が、頭をよぎってしまった。



葛藤を抱えながら日々を走り抜け、ようやく迎えた12月初旬の金曜の夜。

久しぶりにぽっかりと空いた予定の欄に、羅華は迷いながらも那色の店へと足を運んだ。

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