過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜
震える手と温かな誓い
病室の扉を静かに開けると、朝の光が淡く差し込む中、ベッドの上にぽつんと小さな塊があった。
……布団にすっぽりと潜り込んで、頭まで覆っている。
名前を確認するまでもない。
大原雪乃――間違いない。
だが、いったい何をしているのか。
神崎はベッドの足元まで近づくと、布団越しにやわらかく声をかけた。
「雪乃さん、おはようございます」
返事はない。微動だにしない布団の塊。
神崎は少しだけため息をつき、布団の上から手でポンポンと叩く。
すると、中でわずかに布がもぞもぞと動いた。
「……早く、診察させてくれ」
そう言いながら、神崎は手を伸ばし、そっと布団の端を持ち上げた。
中から現れたのは、泣き腫らしたような赤い目と、熱を帯びた頬。
眉間に自然としわが寄った。
「……泣いてたの?」
問いかけに、彼女はしばらく視線を泳がせたあと、小さく唇を動かした。
「……こわいから」
「何が、怖いの?」
神崎の声は静かだった。
だがその奥に、抑えきれない焦りと痛みがにじんでいた。
雪乃は、少しだけ口元を歪めて、苦笑に似た表情をつくった。
「昨日から、ずっと苦しかったのに……誰も、なんにもしてくれなくて……」
「怖かった」
その声はかすれていた。
まるで、ようやくそれを誰かに伝えられた安堵と、恥じらいが入り混じっているようだった。
神崎は無言で体温計を探すが、手元にない。
代わりに彼女の額に手を当てると、その熱さに眉が跳ね上がった。
「熱いな……」
次に手首に触れ、脈を確認する。
リズムが乱れ、呼吸も浅い。肩が上下しているのがわかる。
「……咳、出る?」
雪乃は、布団の中から小さく頷いた。
その目――不安と怯えに揺れていたが、その奥に、確かに「助けて」という訴えが宿っていた。
神崎の中で、何かが強く軋んだ。
もっと早く気づいていれば。
もっときちんと守っていれば。
「……もう大丈夫。ちゃんと診るから」
そう言って、彼女の頭にそっと手を置いた。
その手が、わずかに震えていたことに、彼女はまだ気づいていない。
……布団にすっぽりと潜り込んで、頭まで覆っている。
名前を確認するまでもない。
大原雪乃――間違いない。
だが、いったい何をしているのか。
神崎はベッドの足元まで近づくと、布団越しにやわらかく声をかけた。
「雪乃さん、おはようございます」
返事はない。微動だにしない布団の塊。
神崎は少しだけため息をつき、布団の上から手でポンポンと叩く。
すると、中でわずかに布がもぞもぞと動いた。
「……早く、診察させてくれ」
そう言いながら、神崎は手を伸ばし、そっと布団の端を持ち上げた。
中から現れたのは、泣き腫らしたような赤い目と、熱を帯びた頬。
眉間に自然としわが寄った。
「……泣いてたの?」
問いかけに、彼女はしばらく視線を泳がせたあと、小さく唇を動かした。
「……こわいから」
「何が、怖いの?」
神崎の声は静かだった。
だがその奥に、抑えきれない焦りと痛みがにじんでいた。
雪乃は、少しだけ口元を歪めて、苦笑に似た表情をつくった。
「昨日から、ずっと苦しかったのに……誰も、なんにもしてくれなくて……」
「怖かった」
その声はかすれていた。
まるで、ようやくそれを誰かに伝えられた安堵と、恥じらいが入り混じっているようだった。
神崎は無言で体温計を探すが、手元にない。
代わりに彼女の額に手を当てると、その熱さに眉が跳ね上がった。
「熱いな……」
次に手首に触れ、脈を確認する。
リズムが乱れ、呼吸も浅い。肩が上下しているのがわかる。
「……咳、出る?」
雪乃は、布団の中から小さく頷いた。
その目――不安と怯えに揺れていたが、その奥に、確かに「助けて」という訴えが宿っていた。
神崎の中で、何かが強く軋んだ。
もっと早く気づいていれば。
もっときちんと守っていれば。
「……もう大丈夫。ちゃんと診るから」
そう言って、彼女の頭にそっと手を置いた。
その手が、わずかに震えていたことに、彼女はまだ気づいていない。