【完結】国外追放された箱詰め聖女が隣国で子育てしながら満腹&幸せになるまで

三章 幸せすぎる(食)生活

(リオネルside)


リオネルはアイビーを抱きしめながら眠るローズマリーの髪を撫でていた。
ライムグリーンの髪はまるで魔法樹の葉のように美しい。
彼女の寝顔を見ていると、どうしようもない愛おしさが込み上げてくる。

(まだ出会って間もないというのに……彼女を放っておけない。こんな気持ちになったのは初めてだ)

それはローズマリーが聖女で国に有益だからという理由ではない。
リオネルはローズマリー自身に惹かれているのだ。
一目惚れに近いのかもしれない。
まさか自分がそんな状態になるとは思ってもみなかったが。

ローズマリーは城下町で仕入れをする荷馬車の箱に紛れていた。
リオネルは魔法樹の影響で困っている人はいないか、町の様子を見て回っていた。
リオネルの力は重いものを持ったり動かしたりすることができる。
重力を無視して自由自在に操れるが、強力な力のため頻繁には使わないようにはしている。
災害や大きな事件の時には十分、役に立つ。

リオネルが町で一番大きな通りを歩いていると、とある店の前に人集りができていた。
真ん中にはリオネルがギリギリ抱えられるかどうかくらいの大きな箱があった。
箱の隙間からは花や蔦が絡まっていたが、箱が開かずに何が入っているかわからないのだそう。
商人は不気味がっていたが、リオネルはその箱に魔法がかかっていることはすぐに理解できた。

(何か不思議な気配を感じる……なぜだろうか)
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