君ともう一度、 恋を始めるために

父と娘

涼が門司に来て1週間あまり。
柚葉の病室で寝泊まりしながら、朝と夕方には莉奈と共に父娘の時間を過ごしていた。
そして日中は眠ったままの柚葉の隣でパソコンを開き、時には会議まで病室でこなしていた。

『それでは社長、午後の会議は2時からの予定ですのでよろしくお願いします』
「ええ、わかっています。資料の準備ができ連絡をください」
『承知しました。では、失礼します』

先日、神崎ホテルグループの海外進出をかけた契約が整ったからこそ、涼の仕事には多少の余裕があった。
とは言っても、毎日数件の会議と何十通にも及ぶ決裁書類、その他にも厄介な案件もたくさん抱えているが、今の涼には柚葉の側にいることが最重要事項に思えていた。

「柚葉、早く目を覚ませ。おばあさんも莉奈ちゃんも待っているぞ」

そっと額をなでながら声をかける涼。
しかし、柚葉が目を開けることはない。
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