君ともう一度、 恋を始めるために
エピローグ・・・未来

初詣

新年、一月。
いつもなら泊り客で賑わうはずの旅館も、今年は静かに年明けを迎えた。
建物の修繕は無事に終わったものの、祖母ばかりでなく柚葉までが倒れてしまい旅館の再開どころではなくなってしまった。
今は急ピッチで準備を進めているが、営業再開はもう少し先になりそうだ。
しかし、そんな中でも新年のあいさつをしようと仲間たちが休業中の旅館に集まった。

「明けましておめでとうございます。待ってくださっているお客様には申し訳ないけれど、桜の咲くころを目指して営業再開の準備を進めていきましょう」
「「はい」」

スタッフたちが、柚葉の言葉にうなずく。

柚葉が倒れてから、旅館の再開に向けた業務は涼の手配した50代後半に見える男性マネージャーが代行している。
どうやら涼とは昔からの知り合いで、長年神崎ホテルグループで働いてきたベテランホテルマンのようだ。
温厚で人当たりがよく、柚葉はもとより祖母ともスタッフのみんなともとてもいい関係を築いている。
ただ、あくまでも涼が個人的に依頼した格好になっていて、費用について柚葉は何も聞かされてはいない。
一度費用の支払いをしたいと涼に相談したのだが、「俺が好きでやったことだから」と断られてしまった。
もちろん涼には涼の考えがあるのだろうし、病み上がりに柚葉に何ができるわけでもなく、結局任せるしかなかった。
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