君ともう一度、 恋を始めるために

神崎涼の苦悩

生まれも育ちも東京の涼。
一人っ子のせいか、何でも自分の思うようになったし、大きなホテルをいくつも経営する父は、必要だと思うものは惜しみなく買い与えてくれた。
兄弟がいないことが寂しいと思ったこともあまりなかったし、本当に幸せに育ててもらったと思う。
もちろん大手ホテルチェーンの跡取り息子には影で色々と言う奴はいるし、メディアへ露出する機会だってないわけではない。
そのことを不便だと感じたことがないと言えば嘘になるが、あまり苦痛ではなかった。
そんな涼が無事に私立の名門大学を卒業し、就職したのは大阪の老舗商社。
そこは父とも親交のある会社で、数年間勤務をしてビジネスの勉強をした後海外へ行き、ゆくゆくは神崎ホテルグループの取締役として帰国する。それが父との約束だった。
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