君ともう一度、　恋を始めるために

隠したい秘密

「ママ、行ってらっしゃい」
「行ってきます。なるべく早く帰ってくるからね」

祖母の家の玄関から、莉奈が大きく手を振る。
それに対して柚葉は、何度も振り返りながら手を振り返した。

門司に住むようになって、仕事にも莉奈の保育園にもやっと慣れた。
都会ではないが生活するのに不自由はなく、莉奈も自然豊かな環境を気に入っているようだ。
今は月末に保育園で行われるハロウィンパーティーに向けて準備を進めている。
このまま静かに親子二人での生活を送りたいと柚葉は願っているのだが、現実はそう簡単にはいかない。
実は、涼から会いたいと連絡があったのだ。
もちろん住所も連絡先も教えてはいないが、おそらく恭介からでも聞き出したのだろう。
すでに電話番号も知っていて、突然電話がかかってきた。
内容は、「もう一度会いたい」というもので、断ることもできなくはなかったが、すでに門司に住んでいることを知っている涼が本気になれば居場所を探すことなど簡単なこと。
見つかるのも時間の問題だと思い、柚葉は会う約束をした。
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