君ともう一度、 恋を始めるために

会えない時間

東京に一拍だけして、柚葉と莉奈は門司へ帰ってきた。
これと言って観光地を回ることもなく、用意されたホテルで過ごしただけだった。

「今度はゆっくり観光して、遊園地にも行きましょうね」
「はーい」

今回の東京行きで、莉奈は遊園地に行くことをとても楽しみにしていたが、残念ながらその時間はなかった。
ヨーロッパを長期出張中の涼が現地で倒れたとの連絡が入り、それどころではなくなったのだ。

「でもママ、噴水が大きかったね。お花もきれいだった」
「そうね綺麗なお庭だったわね」

涼の実家の立派過ぎるお庭を莉奈はとても気に入ったようだ。
もう二度と行くことはないのかもしれないけれど、涼の母に会わせてあげることができてよかった。
柚葉は本心からそう思っていた。
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