愛しのマイガール
プロローグ


——「ハルちゃん、大きくなったら、るりとけっこんしてね!」



あの頃の私は、未来の意味なんて知らなかった。

小さな手で彼の指をぎゅっと握って、にこっと笑っただけ。子ども特有の、なんの保証もない“やくそく”。

あれから十年が過ぎて、私は少しだけ大人になった。

恋をして、泣いて、裏切られて。


あの約束は、心の奥底にしまい込んだままだった。忘れていた。

……そう、思っていた。


でも、あの日。彼と再会した瞬間。


「久しぶりだな、るり」


低く落ち着いた声でそう言った彼の瞳に、たしかに昔と同じ、優しい光が宿っていた。

私が思い出の中に閉じ込めていた初恋そのもの。

忘れたふりをしていたのは、きっと私のほう。




私はあの日の記憶ごと、また恋に落ちた。



< 1 / 200 >

この作品をシェア

pagetop