愛しのマイガール
プロローグ
——「ハルちゃん、大きくなったら、るりとけっこんしてね!」
あの頃の私は、未来の意味なんて知らなかった。
小さな手で彼の指をぎゅっと握って、にこっと笑っただけ。子ども特有の、なんの保証もない“やくそく”。
あれから十年が過ぎて、私は少しだけ大人になった。
恋をして、泣いて、裏切られて。
あの約束は、心の奥底にしまい込んだままだった。忘れていた。
……そう、思っていた。
でも、あの日。彼と再会した瞬間。
「久しぶりだな、るり」
低く落ち着いた声でそう言った彼の瞳に、たしかに昔と同じ、優しい光が宿っていた。
私が思い出の中に閉じ込めていた初恋そのもの。
忘れたふりをしていたのは、きっと私のほう。
私はあの日の記憶ごと、また恋に落ちた。
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