神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない

第2部 静かなる敵意

そして翌日、神殿の最奥にある祭壇の間で――

“信託の儀式”が厳かに執り行われた。

白銀に輝く柱が並ぶ神聖な空間に、神官たちの祈りの声が響き渡る。

「聖なる神は、天の詔(みことのり)を聖女、エミリア・セラフィーナに託し――」

朗々と読み上げられるその言葉は、とにかく長かった。

意味は途中から少しずつしか頭に入ってこなかったけれど、どうやら私は“神と人をつなぐ橋”になったらしい。

それが、私の宿命――この時代の聖女としての役割。

続いて、国王陛下からの任命式が始まった。

「エミリア・セラフィーナを、この時代の聖女とし――国の守り手として、その名を歴史に刻む。」

私は跪き、頭を下げた。

すると、儀式係の神官がそっと持ってきたのは――

大粒の宝石があしらわれた、美しいティアラだった。

聖女の証。

王族の冠にも劣らぬ、清らかで荘厳な光を放つそれが、私の頭上にそっと置かれる。

……重い。

物理的にも、精神的にも。
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