神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない

第4部 芽吹きの奇跡と、宮廷の風

しばらくして、私は中庭を歩いていると、使用人たちが何やら困った様子で話し合っているのが見えた。

「どうしました?」

私が声をかけると、彼らは驚いたようにこちらを見た。

「ああ……聖女様……」

皆、急に黙り込んでうつむいてしまう。

「何か、困っていることでも?」

しばらくの沈黙の後、一人の若い使用人が、おずおずと口を開いた。

「実は……裏手の泉が枯れてしまっていて……水の調達に困っているのです」

「泉が……?」

私は驚いて問い返した。

するとすぐに、別の使用人がその青年の肩を掴んだ。

「おい、余計なことを言うな!クラリーチェ様に黙っていろと……!」

「クラリーチェ様が? なぜ?」

その言葉に、さらに空気が凍った。

年配の使用人が私をにらむように睨みつける。

「あなたが来てから、泉が枯れ始めたんですよ。」

その言葉に、私は思わず動きを止めた。
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