神託で選ばれたのは私!? 皇太子の溺愛が止まらない

第5部 仮面舞踏会

そして王宮では、仮面舞踏会が開かれた。アニーがドレスを用意する。

「エミリア様も、招待されているのでしょう?」

そう言ってアニーが持ってきたのは、深い紺色の美しいドレスだった。

銀糸が裾に刺繍されていて、まるで夜空に星が瞬いているよう。

私はそっと指先でその布地をなぞる。

「私、踊ったことがないの。」

ぽつりとつぶやくと、アニーが驚いた顔でこちらを見た。

「まあ……。でも大丈夫ですよ。舞踏会はお喋りを楽しんだり、音楽を聴いたりするだけでも素敵な場所です」

私は少し笑って、ドレスを体にあてがった。

「まるでシンデレラみたいね。誰にも気づかれずに、舞踏会に現れて……そして――」

そこまで言って、ふと踊るようにくるりと回ってみる。

――その瞬間。

「……あっ。」

後ろの扉が開く音に、私はびくりと肩を跳ねさせた。

振り返ると、そこにはユリオが立っていた。
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