片想い歴20年 エリート警視は同級生に激愛を注ぎ込む
9・両家挨拶
変質者騒ぎから約3週間後。
ついに、両家へ婚約者を紹介する日がやってきた。
圭信の実家で挨拶を済ませてから私の実家へ向かい、その足で婚姻届を出しに行く。
朝から晩まで外出をしっ放しの超過密スケジュールだ。
――こうなったのも、私と早く入籍したがっている婚約者が悪い。
手土産を握りしめた私は玄関先のインターフォンを鳴らし、戸川家の敷居を跨いだ。
「僕の妻。戸川愛奈だ」
「はじめまして。それから、お久しぶりです!」
私はお母様とお父様にそれぞれ視線を向けてから言葉を紡ぐと、すっかり先走って入籍後の名字を伝えた圭信のせいで困惑しているご両親へ、旧姓を告げた。
「豊臣愛奈と申します。圭信さんとは、学生時代の同級生です!」
「あら。圭信が酔っ払うと口にする、あの愛奈ちゃん?」
「なるほど。それで久しぶりだと……」
ご両親はすぐに、学生時代の私と圭信の口から語られていた想い人を結びつけてくれたようだ。
話が早くて助かるとニコニコとイルデンで培った営業スマイルを遺憾無く発揮していれば、お母様の信頼を勝ち取ることに成功したらしい。
「とっても素敵な美人さんだから、圭信もあんなに焦っていたのね」
「母さん」
「この子の慌てふためく姿、愛奈さんに見せてあげたかったわ~」