片想い歴20年 エリート警視は同級生に激愛を注ぎ込む
12・刃物男と主犯
 防犯対策に配られた携帯ストラップのモチーフがオープンハートだったせいで、酷い目に遭った……。
 私は昨日の疲れを癒せぬままげっそりとした状態で出社し、普段通りアトラクションの入口に立って声を張り上げる。

「ヴァンパイアの館は、10分待ちでーす!」

 ひらひら手を振りながら時折待ち時間をアナウンスしていれば、地図を片手にあたりを見回す男性と目が合った。

「すいません」
「はーい! ごきげんよう!」
「魔物の森ってこの辺ですよね?」

 彼は広い園内で迷子になった、ゲストのようだ。
 そこは入園時に魔物を選択しなければ入場不可のエリアだ。
 ガーディアンとしてイルデンにやってきたこの人には、あの場所へ立ち入る資格がない。

「魔物の森は、立ち入り禁止ですよ?」
「えっ?」
「検問があるので、魔物しか中に入れないんです!」
「そうなんですか……?」
「はい。場所は教えますけど、気をつけてくださいね」
「気をつける……?」
「無理に中へ入ったら、酷い目に遭うかもしれませんよ?」

 設定上はそういうことになっているが、大きなクレームに発展するのはイルデン側も避けたいのだろう。
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