片想い歴20年 エリート警視は同級生に激愛を注ぎ込む
4・君は世界のすべて(圭信)
「どうして君は、僕を委員長と呼ばないんだ」
「だって、たまたまそう言う役職についただけで……。圭信は戸川圭信じゃん。下の名前、呼んじゃ駄目だった?」

 その言葉にどれほど救われたか。
 君はきっと、理解していないだろう。

「いや……」

 僕にとって豊臣愛奈は自分の理解が及ばぬ領域で光り輝く、宝石のような少女だった。

 黒髪厳守、目にかかる前髪は眉より上で切り揃える。
 長い髪低い位置では1つに纏め、学園の名に泥を塗らぬような生活態度を心がけるべきなのに――。
 どれほど風紀委員長の僕が注意を促しても、嬉々として校則を破り続けた。

 綺麗に染められた茶髪に、メイク。
 派手なネイルにだらしなさを演出するルーズソックス。
 膝丈スカートの裾を何度も折り曲げ、下着が見えそうなほどに短く改造を施しただけでは飽き足らず、ワイシャツのボタンを第2まで開けて、発育しすぎた胸元を惜しげもなく晒す。

 ――彼女はどこからどう見ても、不良少女と言った類の容姿をしていた。

 愛奈は明るく快活で、細かいことは気にする様子がない。
 真面目で勉強熱心な性格と称される自分とは、真逆の存在だ。

 本来であれば、そんな彼女に好意をいだくなどあり得なかったのだが……。
 一言では言い表しきれないほどに魅力的な女子生徒であると気づいてしまった結果、あっと言う間に愛奈の虜になった。
< 45 / 225 >

この作品をシェア

pagetop