片想い歴20年 エリート警視は同級生に激愛を注ぎ込む
2・8年後の再会は、下着泥棒の被害から
 ――高校の卒業式から、8年後。

「ヴァンパイアの館へ、ようこそ!」

 頭には白の、フリルがかわいらしいヘッドドレス。
 膝下まで長い、クラシカルな黒のエプロンドレスを身に纏ってお客様を出迎えるのは――豊臣愛奈、26歳。

 3つのエリアからなる体験型テーマパーク、イルミナティ・ガーデン。
 通称イルデンの従業員――クルーとして、働いている。

 この施設では来園客が毎回入場する際に、ガーディアン、ヴィラン、魔物の中から1つの役割選択を迫られる。
 その内容によって来場者に対する従業員達の接し方や、施設内での過ごし方が大きく変化するのだ。

「勇敢なガーディアンさんが来てくださるなんて! これで我が館も、魔物に襲われる心配がなくなって安心ですね!」

 ゲストを喜ばせるためにはつねに元気で明るく、没入感を損なわないような接客対応が必須だ。
 彼らの選択した役割を手首のブレスレットで瞬時に判断し、時にはそれに見合った反応をしていた。

 最初のうちは、ぎこちない態度で接してしまったが……。

 高校生のアルバイトから始めて今に至るまで、ずっとイルデンで働いていれば、息をするように臨機応変な対応や演技が染みついてきている。
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