片想い歴20年 エリート警視は同級生に激愛を注ぎ込む
5・満員電車の中で
 こうして私は、圭信と生活をともにするようになった。
 初恋の同級生と偶然再会しただけで一気に同棲なんて、学生時代には考えられないことだ。
 このチャンスを必ずものにし、順調にステップアップを続け――恋人や夫婦になれるように努力を重ねるのが一番いい。
 そう、自分でもよくわかっていたんだけど……。

 ――相手にその気がなかったら、進展なんてしないんだよね……っ! 

 私はため息をつきたい気持ちでいっぱいになった。
 この1週間、なんの成果も得られなかったからだ。

 ドキドキイベントは初日と毎晩の添い寝のみ。
 面と向かって話をするたびに意見の相違によって噛み合わない会話を続けた結果、学生時代と同じように傍から見れば仲が悪くて言い争っているようにしか見えぬ状況を再現し続けていた。

 ――こんな状態で、どうやって恋人になるの? 

 心を通じ合わせてからなんて、絶対に無理だ。
 たとえ軽蔑されたとしても、さっさと身体の関係を持つべきだった。
 そう後悔したところで、消化してしまった時間は戻らない。

 ――なんとかしなきゃ……! 

 今日の夜行われるミニ同窓会は、圭信の本心を聞く大チャンスだ。
 2人きりでは本音を言い合えなくとも、友人達やお酒の力を借りればきっと……。
 私をどう思っているか、わかるはず! 
 そう心の中で気合を入れると、仕事に集中する。

「ヴァンパイアの館へようこそ!」

 ヴァンパイアの館は、ライドアトラクションだ。
 エントランスの大広間で500人程度を収容して世界観や注意事項を伝える前説を15分間隔で行ったあと、ゲスト達は乗り物に乗り込む。
 左手にカウンターを隠し持った私は入口に立ち、満面の笑みを浮かべて長い列を作る人々の人数確認を行っていた。
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