【完結】バツイチですが、恋人のフリをお願いした年下イケメンくんからアプローチされて困ってます!
○三話
きっかけ
これも山あり谷あり人生なのかもしれないけど、山あり谷あり人生でも悪くないって、今なら思えるかもしれない。
眞紀人くんのこと、もっと知りたいって思ったから。
そういう人生もありなんだと教えてくれたのは、間違いなく明日那と眞紀人くんだ。
時には回り道もいいなあ、それも悪くないと思える。 どんな回り道になるかはわからないけど、精一杯回り道を楽しもうと思えた。
「山あり谷ありの人生も、悪くないね」
「ん? なんて言ったの?」
「ううん、なんでもないよ」
病院までの道のりをずっと手を繋いでいた私たちは、きっと周りの見え方的にカップルか夫婦にでも見えていたのかもしれない。
道行く人が眞紀人くんのことを見て何か言っていたし、多分眞紀人くんのことを見ていただけだとは思うけど。
「受付してくるから、ここで待ってて」
「うん」
眞紀人くんが面会の受付をしている間、私は入口付近でスマホを見ながら待っていた。
「菫花さん、お待たせ。行こう」
「うん」
スマホをカバンにしまった私は、眞紀人くんの後を着いていく。
「ここだよ」
「うん」
緩和ケア科の病棟に入ってすぐの病室に、眞紀人くんのお父さんがベッドに寝ていた。 眞紀人くんのお父さんは病気のせいか頬もやせ細っていて、元気がないように見える。
「父さん、体調どう?」
「……まあ、普通だな」
「今日、彼女連れてきたんだ」
眞紀人くんは私を呼び「菫花さん、入って」と手招きする。
「失礼します」
私は眞紀人くんのお父さんの元へと静かに歩み寄る。
「父さん、紹介するよ。 今お付き合いさせてもらってる、北園菫花さん」
「初めまして、北園菫花です。よろしくお願いします」