【完結】バツイチですが、恋人のフリをお願いした年下イケメンくんからアプローチされて困ってます!
○四話

元夫の最低な企みと慰めのキス

✱ ✱ ✱



 あれから十日ほどが経ったけど、私たちは何も変わらないままだ。 一応連絡は頻繁に取っているけど、予定が合わないので会えないままだ。
 恋人のフリを続けることにはなっているけど、いつかこの関係は崩れる日が必ず来る。 だからこそ、この感情の変化には気付きたくない自分がいる。

「お疲れ様でした。お先失礼します」

「お疲れ様ですー」

 週末前の金曜日の夜、仕事を終えて帰宅しようと歩き出した私の前に「菫花、お疲れ。待ってたよ」と再び文晶が現れたのだった。

「ふ、文晶……なんでっ」

「また来るって言っただろ?」

 文晶がまた現れたことで、私は怒りが沸いた。

「……私、話すことなんてないって言ったよね」

 少し距離を取りながら文晶に視線を向けると、文晶は「そんなこと言うなよ。俺とお前の仲だろ?」と話し掛けてくる。

「はあ? もう赤の他人だよね?私たち」

「そんなこと言うなよ、お前だって俺に会いたかっただろ?」

 私は文晶からそう言われて思わず「軽々しくお前って言わないでくれる? 私たち、もう夫婦じゃないから」と言葉を伝えるが、文晶は聞く耳すら持ってくれない。

「だからやり直そうって言ってるんだろ? もう一度、夫婦になろう」

「ふざけないで! あなたとはもう夫婦になんてならない。私の人生に、あなたなんてもういないのよ」

 コイツ、何も変わってない。 優しいあの頃の文晶は、もうどこにもいない。
 
「なあ、アイツとヤッたの?」

「はあ……?」
 
「あのチャラいアイツと、もうヤッたのかよ?」

 私は怒りが沸きながらも「そんなこと、あなたに言う必要ある? ないよね、もう赤の他人だもの」と言い返した。
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