【完結】バツイチですが、恋人のフリをお願いした年下イケメンくんからアプローチされて困ってます!
○九話

過去の話と今の話



「行くはず……だった?」

「でも俺、その時体調を崩してスキーに行けなかったんだ。……もしあの時、俺もそのスキーに行ってたら、俺もきっと今頃ここにはいなかったかもしれない」

 眞紀人くんからその話をされた時、私は何も言えないままだった。

「彼女が行ってたスキー場で雪崩の事故が起きて、その雪崩に巻き込まれてスキー場にいた何人もが犠牲になった。 あの事故で、何人の人が亡くなったかわからない。……当時は大きな雪崩事故ってこともあって、ニュースでも連日報道されてたけど」

 まさか眞紀人くんに、そんな悲しい過去があったなんて……。

「……私もそのニュース、テレビで見た記憶あるよ。 あれは、本当にひどい事故だったよね」

「俺は今こうして生きてるけど、彼女はたった十七年という短い人生を雪崩で失った。……だから俺は、彼女の分まで生きようって思ったんだ」

 眞紀人くんその表情から、その辛さが滲み出ている気がした。

「あれ以来俺は、人を好きになってもまた失うんじゃないかって思って……ずっと怖かった。 でも、菫花さんと出会って俺も変われたと思う」

「……え?」
  
「菫花さんと恋人のフリをするってなった時、俺は絶対に菫花さんのことを好きになってはいけないって、自分に言い聞かせたんだ。 また大切な人を失うかもしれない……そう思ったから、言い聞かせた」

 眞紀人くんは私の手をギュッと握り締めると、「でも一緒に過ごすうちに、もう大丈夫だなと思ったんだ。……だから過去のことも全部含めて、菫花さんに話したかった」と少しだけ微笑みながら話していた。

「……私たち、ちょっと似てるかもね」

「え?」

「だってさ……辛い恋愛、経験したし。なんか似てると思わない?」
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