「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています

第三章 偽りの関係?

それからというもの、私には週に一度──カイル殿下との面会の時間が与えられた。

本来なら、婚約した男性が女性の屋敷に通うのが常識。

でも、相手は第2皇子。

多忙な公務を抱えるお立場で、私の屋敷に通うなど現実的ではない。

だから、私が王宮へ通うことになった。

それは決して軽いことではない。

一歩足を踏み入れれば、そこはもう“政”の世界。

王族の婚約者としての自覚が求められる場所。

それでも、私は毎週、きちんと礼を整えて宮殿を訪れた。

そして扉を開けると、必ず彼が笑顔で迎えてくれる。

「──ああ、セレナ。」

その声が、いつも私の緊張をふっと解きほぐしてくれる。

「ご多忙の中、お時間をいただき恐縮です。」

そう丁寧に頭を下げると、カイル殿下は困ったように笑いながら、そっと手を差し伸べてくれる。

「君の顔を見ると、疲れが吹き飛ぶんだ。俺のために来てくれて、ありがとう」
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