「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています

第五章 社交界のざわめき

そして今夜は、舞踏会。

カイル殿下――いいえ、私の婚約者である「カイル」と共に出席する、初めての舞踏会。

この舞台で、私が“第2皇子の婚約者”であることが、貴族社会に正式に知れ渡る。

誇らしさと、ほんの少しの緊張を胸に、私は馬車の中で深く息を吸った。

「さあ、着いたよ。」

カイルが先に馬車から降りると、白手袋の手を差し伸べてくれる。

「ありがとうございます。カイル殿下。」

そう言って手を取ると、彼はクスッと微笑んだ。

「カイル、だろ?」

優しい声が耳に触れ、頬が熱くなる。

――カイル。

婚約者だけが許される、その呼び方。

私は彼の腕をそっと取り、寄り添う。

煌びやかな宮廷の灯りが、私達の頭上に降り注ぐ。

この夜、私はようやく“誰かの隣に立つべき存在”になれた気がした。

会場に足を踏み入れると、シャンデリアの光がきらめき、貴族たちの優雅な笑い声が交錯していた。
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