「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています

第七章 困惑の聖女選定

そしてその知らせは、突然もたらされた。

「国の東端で、“穢土”が発生したと──」

報告を聞いた瞬間、空気が張り詰めた。災厄の象徴である黒い瘴気。それが現れたとなれば、ただ事ではない。

「どうして、そんな事が……」私は思わず口にした。

書類を読みながら、カイル殿下は静かに考え込んでいた。肩に肘を置き、顎に指を添えて──まるで過去の記憶をたぐるように。

「……何かが、動いている。大きな何かが。」

重く、深い声だった。

そして彼は、迷いなく私を見た。

「セレナ、聖女の選定を、父上に願い出てみる」

「聖女……」

神の加護により現れる、特別な存在。

過去、この国が危機に見舞われた時にも現れ、災厄を払ったという伝承がある。

だがそれは、選ばれし“一般人”から顕れるとされており、貴族の娘がなることはまずない。

「今は誰であろうと構っていられない。形だけの貴族より、真に神に選ばれた者を──俺は信じたい」

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