魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~
第21話 森の異変
村に戻ると、手持ち無沙汰に広場を掃除していた男たちや、家の前で干し物をしていた女たちが、一斉にこちらを振り返った。
ほうきを手にしたまま駆け寄ってくるおじさん、干していた洗濯物を手早く片付けてから手を振るおばさん、ベンチに腰を下ろしたまま目を細めてこちらを見つめる老婆。
「おぉ、無事だったか!」
「道はどうなったんだい?」
「ケガはしてねえか?」
村人たちは口々に声をかけながら、まるで吸い寄せられるように集まってくる。
囲まれたエルドが一度咳払いをして場を鎮めると、途端にその場のざわめきが静まりかえった。
だが、彼らの目はなにより雄弁だった。
蜘蛛の巣はどうなったのか。
誰も口に出さないその問いが、視線に込められている。
「片付けた。もう通れる」
エルドの短くもたしかな言葉に、張り詰めていた空気がふっと緩む。
「そりゃありがてえ! さすがだな、エルドさん!」
「やっぱり頼りになるよ!」
次々と称賛の声が上がり、明るい笑いが辺りを包み始める。
ほっとしたような笑顔がひとつ、またひとつと増えていくその輪の中で――ワナワナと肩を震わせていたリンコが、ついに堪えきれず、ひときわ大きな声を上げた。
「わたしがやったのよ!」
ぴしゃり、と音がしたような鋭さで響いたその言葉に、周囲の空気が一瞬止まる。
(リンコ……!)
ほうきを手にしたまま駆け寄ってくるおじさん、干していた洗濯物を手早く片付けてから手を振るおばさん、ベンチに腰を下ろしたまま目を細めてこちらを見つめる老婆。
「おぉ、無事だったか!」
「道はどうなったんだい?」
「ケガはしてねえか?」
村人たちは口々に声をかけながら、まるで吸い寄せられるように集まってくる。
囲まれたエルドが一度咳払いをして場を鎮めると、途端にその場のざわめきが静まりかえった。
だが、彼らの目はなにより雄弁だった。
蜘蛛の巣はどうなったのか。
誰も口に出さないその問いが、視線に込められている。
「片付けた。もう通れる」
エルドの短くもたしかな言葉に、張り詰めていた空気がふっと緩む。
「そりゃありがてえ! さすがだな、エルドさん!」
「やっぱり頼りになるよ!」
次々と称賛の声が上がり、明るい笑いが辺りを包み始める。
ほっとしたような笑顔がひとつ、またひとつと増えていくその輪の中で――ワナワナと肩を震わせていたリンコが、ついに堪えきれず、ひときわ大きな声を上げた。
「わたしがやったのよ!」
ぴしゃり、と音がしたような鋭さで響いたその言葉に、周囲の空気が一瞬止まる。
(リンコ……!)