魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~
第26話 適材適所
翌朝。
窓を開けると、外の空気はすでに冬の気配を帯びていた。
ひんやりとした風がひゅうと音を立てて流れ込み、リュミの頬を掠めていく。冷たさに思わず身を縮め、肩を竦めながら両腕で自分の体を抱きしめた。
「さむい……」
思わずこぼれた声は、小さな白い息となって空へと消えていった。
季節はもう、秋の終わり。冬が静かに、けれど確実に近づいてきている。
リュミが部屋を出ると、居間ではエルドが大きな地図をテーブルの上に広げ、その上に手をつきながら、じっと真剣な顔つきで見つめていた。
部屋の中では、暖炉にくべられた薪がパチパチと音を立て、静かに、そしてあたたかく火が揺らいでいる。
エルドの鋭い視線の先には、地図の端、森の奥深く――そこに描かれた、古龍のすみかがある。
「……古龍に近づくには、それなりの準備が必要だ」
低く落ち着いた声が、暖炉の火の揺らめきと一緒に部屋の中に響いた。
炎の影がエルドの横顔に落ち、その表情をより真剣に見せている。
「準備って……ごはんとか?」
なんとなく間の抜けた質問を、リュミは思わず口にしてしまった。
自分でも少しおかしくなって、くすっと笑いそうになったけれど、エルドは変わらず真剣なまま、こくりと頷く。
「食料は確保してある。だが、それだけでは足りない。命を守るための道具と、森の中で身を守るための備えが必要なのだ」
その言葉は、まるで冷たい水のように、空気をぴんと張り詰めさせた。
部屋の中がしん……と静まりかえり、誰かの小さな息づかいだけが聞こえてくる。
静けさを破るように、ムスティがぽつりとつぶやいた。
窓を開けると、外の空気はすでに冬の気配を帯びていた。
ひんやりとした風がひゅうと音を立てて流れ込み、リュミの頬を掠めていく。冷たさに思わず身を縮め、肩を竦めながら両腕で自分の体を抱きしめた。
「さむい……」
思わずこぼれた声は、小さな白い息となって空へと消えていった。
季節はもう、秋の終わり。冬が静かに、けれど確実に近づいてきている。
リュミが部屋を出ると、居間ではエルドが大きな地図をテーブルの上に広げ、その上に手をつきながら、じっと真剣な顔つきで見つめていた。
部屋の中では、暖炉にくべられた薪がパチパチと音を立て、静かに、そしてあたたかく火が揺らいでいる。
エルドの鋭い視線の先には、地図の端、森の奥深く――そこに描かれた、古龍のすみかがある。
「……古龍に近づくには、それなりの準備が必要だ」
低く落ち着いた声が、暖炉の火の揺らめきと一緒に部屋の中に響いた。
炎の影がエルドの横顔に落ち、その表情をより真剣に見せている。
「準備って……ごはんとか?」
なんとなく間の抜けた質問を、リュミは思わず口にしてしまった。
自分でも少しおかしくなって、くすっと笑いそうになったけれど、エルドは変わらず真剣なまま、こくりと頷く。
「食料は確保してある。だが、それだけでは足りない。命を守るための道具と、森の中で身を守るための備えが必要なのだ」
その言葉は、まるで冷たい水のように、空気をぴんと張り詰めさせた。
部屋の中がしん……と静まりかえり、誰かの小さな息づかいだけが聞こえてくる。
静けさを破るように、ムスティがぽつりとつぶやいた。