魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~
第27話 暖炉の前で
夜の冷気は、昼のにぎやかさをすっかり呑みこんでしまっていた。
風はどこへやら、木々の葉すら揺れず、遠くに広がる森までもが、深い眠りについたかのように、静まりかえっている。
それは、ただの静けさではなかった。
どこかでなにかが始まることを、世界そのものが感じ取っているような、そんな不思議な沈黙。
窓から見上げた空は、信じられないほど澄みきっていた。
星たちは氷の粒のように冷たく、それでいてキラキラとしていて美しい。
その光はやさしく、けれど少しだけ、張り詰めた緊張を帯びていた。まるで、明日という日がただの一日ではないことを、空までもが知ってるようだった。
明日には、森の奥――古龍のもとへ向かう。
そのことを思うだけで、リュミの胸はきゅっと縮こまった。
喉の奥に、重たい石のようなものが落ちていく。
言葉にはできない不安。それでも、心のどこかで祈ってしまうような気持ち。
そのふたつが胸の中でぶつかり合い、心がざわついて落ち着かない。
本当なら、そろそろ寝る時間のはずだった。
けれど、誰も部屋に戻ろうとしない。
まるで暖炉の炎に惹かれるように、リュミたちは自然とその前に集まっていた。
言葉少なに集まった仲間たちは、ふだんよりずっと静かで、それぞれが自分の思いを心の奥にしまいこんだまま、ただゆらゆらと揺れる火を見つめている。
炎の光がだんだんと自分の気持ちを浮き上がらせていくような気がして、誰も目を逸らすことができなかった。
あのリンコでさえ、今は羽を広げることもなく、小さく丸まって火にあたっている。
いつものような憎まれ口も聞こえない。
ムスティはリュミの胸元にぴったりとくっついて、小さな体をブローチのように寄せて眠っていた。
微動だにしないその姿からは、静かな緊張が伝わってくるよう。
風はどこへやら、木々の葉すら揺れず、遠くに広がる森までもが、深い眠りについたかのように、静まりかえっている。
それは、ただの静けさではなかった。
どこかでなにかが始まることを、世界そのものが感じ取っているような、そんな不思議な沈黙。
窓から見上げた空は、信じられないほど澄みきっていた。
星たちは氷の粒のように冷たく、それでいてキラキラとしていて美しい。
その光はやさしく、けれど少しだけ、張り詰めた緊張を帯びていた。まるで、明日という日がただの一日ではないことを、空までもが知ってるようだった。
明日には、森の奥――古龍のもとへ向かう。
そのことを思うだけで、リュミの胸はきゅっと縮こまった。
喉の奥に、重たい石のようなものが落ちていく。
言葉にはできない不安。それでも、心のどこかで祈ってしまうような気持ち。
そのふたつが胸の中でぶつかり合い、心がざわついて落ち着かない。
本当なら、そろそろ寝る時間のはずだった。
けれど、誰も部屋に戻ろうとしない。
まるで暖炉の炎に惹かれるように、リュミたちは自然とその前に集まっていた。
言葉少なに集まった仲間たちは、ふだんよりずっと静かで、それぞれが自分の思いを心の奥にしまいこんだまま、ただゆらゆらと揺れる火を見つめている。
炎の光がだんだんと自分の気持ちを浮き上がらせていくような気がして、誰も目を逸らすことができなかった。
あのリンコでさえ、今は羽を広げることもなく、小さく丸まって火にあたっている。
いつものような憎まれ口も聞こえない。
ムスティはリュミの胸元にぴったりとくっついて、小さな体をブローチのように寄せて眠っていた。
微動だにしないその姿からは、静かな緊張が伝わってくるよう。