魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~
第34話 季節は巡る
あれから、季節はゆっくりと巡っていった。
氷のように冷たく閉ざされていた森の奥は、やがてそのかたさをほぐし、一筋の日差しに応えるように、やわらかな芽吹きを見せ始めた。
森を渡る風は冬の名残をかすかに残しながらも、どこかあたたかく、草や花の香りを含み、頬にふわりと触れてくる。
雪解けの水は小さなせせらぎとなって光を弾き、空には鳥たちの声が高らかに響く。
枝という枝が、小さな命の喜びに揺れている。
リュミは今もヴィルダの森で暮らしている。
あの古龍が消えた日から、もう数カ月が経っていた。
戦いの記憶はまだ心の奥底に残ってはいたけれど、その爪痕は森の緑に包まれるように、ゆっくりと癒え始めている。
倒れた木々には新しい芽が芽吹き、焦げた地面にも小さな草が顔を出している。
そして、そこを吹き抜ける風は、以前よりもどこかやさしい。
まるで森そのものが、長い眠りから目覚めて、また静かに息を始めたかのように。
リュミは、そんな風の中で足を止め、大きく息を吸い込んだ。
胸いっぱいに満ちるのは、あたたかな草の香りと、どこか懐かしい木のにおい。
それだけで、体の奥から力が湧いてくるような気がする。
足元には、小さな黄色い花がそっと咲いている。
リュミはしゃがみ込み、そっとそれに指を伸ばす。
そして――ふっと微笑んだ。
「……おかえりなさい」
ぽつりと、独り言のようにつぶやいたその声に、まるで応えるかのように、周囲の木々がやさしくざわめいた。
どこからともなく鳥の群れが降りてきて、リュミの肩や腕にぽとぽとと止まってくる。
「ふわぁ……重いよぉ」
笑いながら体を傾けたその瞬間、背後の茂みががさりと揺れる。
そこから姿を見せたのは、パッロとリンコ、そしてムスティだった。
氷のように冷たく閉ざされていた森の奥は、やがてそのかたさをほぐし、一筋の日差しに応えるように、やわらかな芽吹きを見せ始めた。
森を渡る風は冬の名残をかすかに残しながらも、どこかあたたかく、草や花の香りを含み、頬にふわりと触れてくる。
雪解けの水は小さなせせらぎとなって光を弾き、空には鳥たちの声が高らかに響く。
枝という枝が、小さな命の喜びに揺れている。
リュミは今もヴィルダの森で暮らしている。
あの古龍が消えた日から、もう数カ月が経っていた。
戦いの記憶はまだ心の奥底に残ってはいたけれど、その爪痕は森の緑に包まれるように、ゆっくりと癒え始めている。
倒れた木々には新しい芽が芽吹き、焦げた地面にも小さな草が顔を出している。
そして、そこを吹き抜ける風は、以前よりもどこかやさしい。
まるで森そのものが、長い眠りから目覚めて、また静かに息を始めたかのように。
リュミは、そんな風の中で足を止め、大きく息を吸い込んだ。
胸いっぱいに満ちるのは、あたたかな草の香りと、どこか懐かしい木のにおい。
それだけで、体の奥から力が湧いてくるような気がする。
足元には、小さな黄色い花がそっと咲いている。
リュミはしゃがみ込み、そっとそれに指を伸ばす。
そして――ふっと微笑んだ。
「……おかえりなさい」
ぽつりと、独り言のようにつぶやいたその声に、まるで応えるかのように、周囲の木々がやさしくざわめいた。
どこからともなく鳥の群れが降りてきて、リュミの肩や腕にぽとぽとと止まってくる。
「ふわぁ……重いよぉ」
笑いながら体を傾けたその瞬間、背後の茂みががさりと揺れる。
そこから姿を見せたのは、パッロとリンコ、そしてムスティだった。