魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~

第9話 森ぐらし終了のお知らせ⁉

 その日、リュミとパッロは庭で、落ち葉を踏みしめながら遊んでいた。
 秋も深まり、赤や黄色に染まった葉がひらひらと舞い落ちる中、ふたりの足元にはカサカサと乾いた音が心地良く響く。

 リュミは地面に落ちていた細い小枝を拾い上げ、それをうれしそうに掲げた。

「見て、パッロ! この小枝、おもしろい形をしているよ」

 パッロはその小枝に目をやり、ふわふわの耳をぴくりと動かす。
 そして、やわらかな毛並みの尻尾を小さく振った。

「パッロ、こっちの葉っぱも見て! かわいいでしょ?」

 そう言ってリュミが拾った色鮮やかな葉を差し出すと、パッロはそれに鼻先を寄せ、ちょんとやさしく押す。

 そのとき、家の奥からぼそぼそと独り言のような声が聞こえてきた。
 それと同時に、長い影がこちらへと歩み寄ってくる。
 声の主は、エルドだ。

「……なるほど、ふむ……しかし、これは……本当に人間の子なのか……異種族の血が混じっている可能性も……」

 まるで頭の中の考えを整理するかのように、エルドはぶつぶつとつぶやきながら、庭のほうへとやってくる。
 その目は探るようにリュミの姿を追い、次いでパッロへと移っていく。そして、じろじろと動きや表情を観察し始めた。

「この見た目の変化はなんだ?」

「スキルだ」

「スキル《ふわふわ》……なるほど、そういうことか。動きが自然だ。幻覚や擬態の類いではない……では、そちらの小さいほうは……常時スキルを使っているのか?」

「少しだけな」

 エルドの視線が鋭さを増す。
< 39 / 215 >

この作品をシェア

pagetop