魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~

第10話 はじめての薬草採り①

「よし、これを使え」

 エルドが差し出したのは、ひとつのカゴだった。
 木の枝を丁寧に編んだ素朴なつくりで、所々に年季の入った色の濃淡がある。
 見た目は頼りなく見えるが、触れてみると意外としっかりしている。
 長年使われてきたことを感じさせる重みと、どこかあたたかみのある道具だ。

 リュミはそれを両手で受け取り、思わず小さな声を漏らす。

「……お、重い……」

 腕にずしりと伝わる重量感に、体がわずかによろけた。

「大丈夫か、リュミ」

 すぐそばにいたパッロが反応する。
 ぐらついたリュミの体をそっと支え、倒れないよう自分の体で受け止める。
 心配そうなその瞳が、まっすぐリュミを見つめている。

「無理しないでいい。重いならオレが持つから」

 その一言に、リュミははっとして顔を上げる。

「だ、大丈夫だよ……持てるもん」

 そう言って、首を振る。
 けれど、心の奥ではカゴの重さに対する不安が消えなかった。
 それでも、なにかをやり遂げたいという気持ちが、弱音を呑み込ませる。

「リュミ……。わかった、じゃあ疲れたらすぐに言うんだぞ」

「うん」
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