魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~

第11話 はじめての薬草採り②

 薬草採りを終えたリュミは、両腕にしっかりとカゴを抱えて、静かな森の小道を歩いていた。
 土のにおいと草の香りが混ざり合った空気の中で、リュミの足取りはどこか弾んでいる。

 自分で摘んだ薬草をこうして家に持ち帰るのは、今日が初めてだ。
 それだけのことなのに、胸の奥があたたかくて、何度も何度も胸の前にあるカゴの中を覗き込まずにはいられない。

 成果を確かめるようにして、そっと中の葉を見つめる。
 うれしくて、誇らしくてたまらない。

 最初は上手に摘めなかった。
 力加減がわからず、やわらかな葉を破ってしまったこともあった。
 似ているけれど違う葉を摘んでしまい、パッロに「それじゃない」と首を横に振られたことも。
 さらには、うっかり毒草に手を伸ばしかけて、パッロに冷や汗をかかせてしまったことさえあった。

 失敗だらけの一日だったけれど、それでも最後までやり通したことが、誇らしい。

「……ふふっ。ちゃんとできたよ、パッロ」

 笑みをこぼしながらつぶやいた声に、隣を歩くパッロが応える。

「うん、よく頑張ったな」

 その声はいつもよりやさしく、少しだけ低く響いた。
 たった一言なのに、心が躍って、まるですごい宝物を手に入れたような気持ちになる。

(これをエルドさんに渡したら、どんな顔をするのかな……)

 ふと思い浮かべたその人の姿に、胸がきゅっと締めつけられる。
 どんな反応をされるだろう――がっかりされたりしたらどうしよう。
 そんな不安が小さな波のように心を揺らすけれど、それと同じくらい、褒められたいという気持ちもある。

(エルドさんに、よくやったって言ってもらえたら……)
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