結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない

11.秘書失格

「なんで上手くいかないんだよ!」
 営業部に戻ってきた大輝はネクタイを外し、机の上に叩きつけた。
 この二週間、何社か営業に回ったがすべて空振り。
 今月はまだ1件も契約が取れていない大輝は焦った。
 先月までは好調で、資料を見せればすぐに契約書を! と言ってもらえたのに、今月は「検討します」と言われるだけで契約に結び付かない。
 
「せめて1件は契約取らないとな」
 今までずっとトップだったのに0件なんてカッコ悪い。
 大輝はコピーした資料を手に持ちながら、同じ営業部の先輩のもとへ向かった。
 
「山崎さん。この資料の最新データってありますか?」
「あぁ、それ? それは工藤ちゃんが作っていたから、サーバーに入ってる先月分が最新よ」
「誰か引継ぎ」
「してないわ。だって、それ彼女が自主的に作っていたファイルだもの。外回りにいくあなたたちのために残業してまでね」
 作り方も知らないわと山崎にあしらわれた大輝は眉間にシワを寄せた。
 
「あ、鈴木さん。この資料って」
「あぁ、それは工藤さんが作ってくれたから」
 別の資料のことを尋ねたが、鈴木も沙紀の名前を出す。
 サーバーに入っている毎月あたりまえのように更新されていたデータの日付がほとんど先月で止まっていることに気が付いた大輝は、茶色の頭をボリボリと掻きながら休憩室に向かった。

 自販機が設置されている休憩室からキャピキャピとした声が聞こえてくる。
 その声の主が経理の新人、心愛の声だということに大輝が気が付いたのは休憩室の入口だった。
 
「さすが、はっちゃん。ありがと!」
 心愛は冴えない眼鏡の男の頬にチュッとキスをする。
 真っ赤になったはっちゃんと呼ばれた男は、大輝に気づき慌てて逃げていった。
 
「あっ、大輝~! あのね、さっきの人、ITの八王子くんっていうんだけど」
 心愛が大輝に近づき、内緒話のように顔を近づける。
 
「秘書さんの予定、見れるんだって」
「なんで、心愛が沙紀の予定を?」
「だって大輝、秘書さんのこと好きでしょ」
 急に悲しそうな表情を浮かべながら心愛は俯く。
「あんな綺麗な人だもんね。カッコいい大輝にはやっぱり秘書さんみたいに気が利く美人が似合うと思う」
 だからお手伝いと心愛は切なそうに微笑んだ。
 
「……サンキュ、心愛」
「はっちゃんから予定を聞いたら教えるね!」
「あぁ、頼む」
 心愛にもジュースを、そして自分用に缶コーヒーを購入した大輝は明るい表情で休憩室を去って行く。
 
「……単~純っ。あの女を追い出して私がCEOとお近づきになるために決まってんじゃん」
 心愛は買ってもらったジュースを両手であざとく持ちながら、経理部へと戻った。

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