森の運び屋 花園急便─運んだ荷物は毒リンゴ─
俺は森の運び屋『花園急便』。今日は森のはずれにある屋敷の主人からの依頼だ。森の中を歩いていると、木に貼られているチラシが目に入った。
「王子が行方不明ね……」
一国の王子が行方不明だなんて一大事だが、俺には関係ないことだ。道なき道をひたすら進み、森の奥へと足を進めると、徐々に風が冷たくなってきた。
「この先に、家なんてあるのか?」
草木をかき分けて、ようやく辿り着いたその場所には、見るからに怪しげな古い洋館が建っていた。門は傾き、壁一面を蔦や茨が覆っている。周囲を霧に包まれて、自分がどこにいるのかわからなくなりそうだ。
森の運び屋として働いていると、いろんな依頼主に出会う。つい先日は、魔法使いにも荷物を届けた。だが、こんなに気味の悪い場所は初めてだ。
傾いた門をくぐって玄関の前に立つと、何やら呪文のような声が聞こえてきた。
「こんにちは。花園急便です!」
俺は声を張り上げた。しかし、冷たい風が吹くばかりでなんの反応もない。もう一度叫ぼうとして息を吸い込むと、扉がギギギと音を立てて開いた。
「お待ちしておりました、花園急便さん。」
現れたのは、長身で気品がある女王のような風格のある女性だった。古い洋館には不釣り合いで、少しだけ困惑した。
「この箱をここへ届けていただけますか?できるだけ早くお願いしますよ。」
女性が指差した先には、なんの変哲もない茶色い箱がある。その上に、くしゃくしゃの地図が置かれていた。
「承りました。」
軽く頭を下げると、女性はくるりと背を向けた。その瞬間、玄関の鏡に真っ黒なローブを纏った人物が映ったような気がして、俺は瞬きをした。
「まだ何か?」
「……いえ、失礼致します。」
「必ず届けてくださいね、花園急便さん?」
玄関の扉がバタンと閉じると、俺は足早に洋館から離れた。見てはいけないものを見てしまった。
『鏡よ、鏡……世界で一番美しいのはだあれ?』
再び呪文のような声が聞こえたような気がして振り返ると、そこにあったはずの洋館は、霧で見えなくなっていた。
「王子が行方不明ね……」
一国の王子が行方不明だなんて一大事だが、俺には関係ないことだ。道なき道をひたすら進み、森の奥へと足を進めると、徐々に風が冷たくなってきた。
「この先に、家なんてあるのか?」
草木をかき分けて、ようやく辿り着いたその場所には、見るからに怪しげな古い洋館が建っていた。門は傾き、壁一面を蔦や茨が覆っている。周囲を霧に包まれて、自分がどこにいるのかわからなくなりそうだ。
森の運び屋として働いていると、いろんな依頼主に出会う。つい先日は、魔法使いにも荷物を届けた。だが、こんなに気味の悪い場所は初めてだ。
傾いた門をくぐって玄関の前に立つと、何やら呪文のような声が聞こえてきた。
「こんにちは。花園急便です!」
俺は声を張り上げた。しかし、冷たい風が吹くばかりでなんの反応もない。もう一度叫ぼうとして息を吸い込むと、扉がギギギと音を立てて開いた。
「お待ちしておりました、花園急便さん。」
現れたのは、長身で気品がある女王のような風格のある女性だった。古い洋館には不釣り合いで、少しだけ困惑した。
「この箱をここへ届けていただけますか?できるだけ早くお願いしますよ。」
女性が指差した先には、なんの変哲もない茶色い箱がある。その上に、くしゃくしゃの地図が置かれていた。
「承りました。」
軽く頭を下げると、女性はくるりと背を向けた。その瞬間、玄関の鏡に真っ黒なローブを纏った人物が映ったような気がして、俺は瞬きをした。
「まだ何か?」
「……いえ、失礼致します。」
「必ず届けてくださいね、花園急便さん?」
玄関の扉がバタンと閉じると、俺は足早に洋館から離れた。見てはいけないものを見てしまった。
『鏡よ、鏡……世界で一番美しいのはだあれ?』
再び呪文のような声が聞こえたような気がして振り返ると、そこにあったはずの洋館は、霧で見えなくなっていた。
< 1 / 10 >