涙のあとに咲く約束
第三章 家族の真実
藤堂さんと真一くんの三人でお出掛けしてから次の週の金曜日。
その日、藤堂さんの家を訪ねる予定はなかった。
仕事終わりに『このあと、ちょっと寄ってもいいですか?』とメッセージを送ったのは、昼間、彼が少し疲れた顔をしていたのが気になったからだ。藤堂さんは真一くんと二人で暮らしているから、もしかして、今度は藤堂さんが体調を崩しているのかもしれない。
会社では普通を装っているけれど、今日は金曜日。明日が休みだから気が緩んで疲れが出たのではないかと心配になった。
私が押しかけていって、逆に迷惑になるのではないか、訪問は控えたほうがいいのではないかとメッセージを送ってから後悔したけれど……
返ってきたのは、短い『いいよ』の一文。それだけなのに、胸がじんわりと温かくなった。
夕方の街は、梅雨の切れ間の湿った風が吹いていた。
藤堂さんの家の前に着くと、玄関先に見知らぬ女性が立っていた。落ち着いた雰囲気で、目元は藤堂さんによく似ている。
「あら……どなたかしら?」
声をかけられ、思わず姿勢を正す。
「松下と申します。藤堂さんと同じ会社のものです」
女性はふっと柔らかく微笑んだ。
「ああ、そうなのね。息子がお世話になっております」
藤堂さんのお母さんがそう言って私に頭を下げるので、私もつられて「こちらこそお世話になっております」と頭を下げた。
鞄の中から家の合鍵を取り出すと、藤堂さんのお母さんが玄関の鍵を開ける。玄関の扉が開くと、奥から小さな足音が駆けてきた。
その日、藤堂さんの家を訪ねる予定はなかった。
仕事終わりに『このあと、ちょっと寄ってもいいですか?』とメッセージを送ったのは、昼間、彼が少し疲れた顔をしていたのが気になったからだ。藤堂さんは真一くんと二人で暮らしているから、もしかして、今度は藤堂さんが体調を崩しているのかもしれない。
会社では普通を装っているけれど、今日は金曜日。明日が休みだから気が緩んで疲れが出たのではないかと心配になった。
私が押しかけていって、逆に迷惑になるのではないか、訪問は控えたほうがいいのではないかとメッセージを送ってから後悔したけれど……
返ってきたのは、短い『いいよ』の一文。それだけなのに、胸がじんわりと温かくなった。
夕方の街は、梅雨の切れ間の湿った風が吹いていた。
藤堂さんの家の前に着くと、玄関先に見知らぬ女性が立っていた。落ち着いた雰囲気で、目元は藤堂さんによく似ている。
「あら……どなたかしら?」
声をかけられ、思わず姿勢を正す。
「松下と申します。藤堂さんと同じ会社のものです」
女性はふっと柔らかく微笑んだ。
「ああ、そうなのね。息子がお世話になっております」
藤堂さんのお母さんがそう言って私に頭を下げるので、私もつられて「こちらこそお世話になっております」と頭を下げた。
鞄の中から家の合鍵を取り出すと、藤堂さんのお母さんが玄関の鍵を開ける。玄関の扉が開くと、奥から小さな足音が駆けてきた。