仏の顔も三度までですわ！愛人と夫のツケ、すべて返していただきます

第一章 仏の顔１回目

新婚初夜

「俺には恋人がいる。君とは政略結婚だ。君に求めるのは公爵夫人としての役割だけだ」

新婚初夜、今日から夫となった公爵家次期当主のデルバート・アーデンは、開口一番私にそう伝えた。

（あ、またこのパターンか…）

デルバートの短い発言ですべてを悟った私は、無言で頷いた。

私は侯爵家の長女、アリステラ・カリアナ…改め、今日から公爵家の次期当主のデルバートと結婚して妻となったアリステラ・アーデン。年齢は20歳。
結婚式を盛大に挙げて、披露パーティーで関係者に挨拶しまくり、ようやく寝室に夫婦二人きりになったところだった。

「ほぅ…。驚かないんだな…」

なんだか不満げなデルバート。彼は私より４つ年上だ。
あら、反応を間違えたかしら？「どういうことですの！？」と取り乱すのが正解だったかな？

「まぁいい。貴族の政略結婚は普通のことだからな。
俺が愛するのはシェリーナだけだと肝に銘じておくように」

シェリーナって誰よ？
思わずポカンとしてしまった。
まぁ…話の流れ的にデルバートの恋人なんでしょうけど。

「もちろん、君を蔑ろにするつもりはない。
公爵夫人としての立場と権限を与えよう。
君にはこの屋敷の運営と使用人の管理を担ってもらう。詳しい話は明日以降、執事のギルと侍女頭のエミリーに説明させる」

まるで上司のように指示をするデルバート。
私は無言で彼の話を聞き続けた。

「今後、公爵家の夫婦として、一緒に行動する機会は多いだろう。そのときは、愛し合っている夫婦を演じよう。
ただし、屋敷の中では君と夫婦らしいことをするつもりはない。君もそのつもりでいてくれ。
ここではシェリーナを優先する。今夜もこれからシェリーナの部屋にいくつもりだ」

要するに、完全な仮面夫婦で、私には公爵夫人として表向きの仕事だけを求めているのね。
納得した私は深く頷いた。