仏の顔も三度までですわ！愛人と夫のツケ、すべて返していただきます

回想

目が覚めたとき、一瞬今自分がどこにいるのか混乱した。
ゆっくりと体を起こす。

「おはようございます。アリステラ様」

声がした方へ顔を向けると、女性がカーテンを開けていた。
そっか…私は昨日から公爵夫人になったんだっけ。

「ご気分いかがですか？昨日はお疲れになりましたよね。少しでも体調に異変を感じたら、すぐにおっしゃってくださいませ」

カーテンを開けて横にやってきたのは、私の専属侍女のロフィ・ナナイ。
アーデン家から用意されたベテラン侍女で、年齢は確か25歳だったっけ。
黒髪をきれいに１つにまとめ、朝からパリッとした表情をしている。
女性の中ではかなり長身で、凛とした美しさがあった。

「おはようロフィ。ふかふかなベッドでぐっすり眠れたから随分回復したわ」

ベッドから降りて伸びをした。
うん。疲れもほとんど残ってないぞ。

「では、朝のお仕度をいたしましょう。
ご朝食はいかがなさいますか。デルバート様はいつも執務室で軽くお済ませになっておりますので、アリステラ様のご要望に沿うよう、仰せつかっております」

あ、デルバートは私と一緒に食事をする気がないのね。
どうしようかな…。

「お疲れでいらっしゃいましたら、このお部屋へ朝食をお運びいたします。食堂をご希望であれば、そちらにご用意いたします」

私はロフィの顔を見た。
ベテラン侍女は完璧な笑顔で私の返事を待っているけれど、先に部屋での朝食を提案したのは、無意識の配慮かもしれない。

「じゃぁ…お部屋にお願いするわ」

「かしこまりました。すぐにご用意いたします。
その間に、アリステラ様の朝のお仕度をお手伝いさせていただきます。ユミナを呼んでまいりますね。失礼いたします」

ロフィは深くお辞儀をすると、部屋を出て行った。